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「……僕そろそろ腹減ったんだけど、潤は? 夕食どうしようかなぁ。なんか作るか、食べに行くか。テイクアウトでもいいけどさ」
「あー、そうだね、俺も。うーん、何がいいかなぁ。風見さんは? なんか食べたいものある? ていうか、どうしたい?」
力技で強引に話題を変えた陽一郎に、潤も逆らうことなくぎこちない笑顔で合わせて来た。
「作るにしても今何にもないから材料買いに行かなきゃならないし、どっちにしても出掛けないといけないんだよな。だったらもう今日は食べに行くか、なんか買って帰るか、にするか?」
「だったらさぁ、とりあえず出掛けない?」
陽一郎が考えながら言うのに、彼が提案してくる。
「そんないい店行くわけでもないんだからこのまんまの格好でいいしさ。適当に駅前まで出て考えようよ。別に俺、今どうしてもどこで何食べたいとかないし」
──そうだよ、潤はそれくらいはっきりきっぱり、雑なくらいでちょうどいいんだ。潤が雑な人間だなんて僕はちっとも思ってないし、それどころか神経細やかなタイプなんだけど。だからこそ。
少しは普段の調子を取り戻しつつあるらしい潤に、陽一郎も密かに安堵の溜息を吐いた。
「そうだな、ここでぐだぐだ考えてたって仕方ないってか意味ないよな。行こうか」
同意して並んで座っていたソファから立ち上がると、彼も頷いて立ち最低限の荷物を手に二人で玄関へ向かう。
「潤、ちょっと」
玄関のドアを開ける前に、声に振り向いた可愛い恋人を捕まえて陽一郎は触れるだけのキスを贈った。
~『通り雨』END~
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