43人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
「陽一郎さんはこのままでいいの?」
「このまま、って……、何が?」
突然の潤の問い掛けに、陽一郎は何を訊かれたのかまるでわからなかった。
「だからさ、俺と付き合ってていいの?」
「それこそどういう意味だよ。潤とは僕が頼んで頼んでようやく付き合ってもらった筈なんだけど、もう忘れたのか?」
冗談めかした陽一郎の言葉に、彼は釣られることなく真剣に返して来る。
「忘れてない。だけど、それとはまた別にさ。家族とかに、その、いろいろ言われない?」
……恵太の、例の件、だろうか。
つい先日、三年前親元に帰った後輩から『結婚することになった』という電話があったのだ。
潤にも、陽一郎の前に掛けたと言っていた。
知らせることの是非については考え方もそれぞれだろうが、彼が潤に黙っていたくなかったという気持ちもわかる。
相手がそれを知りたかったかどうかはともかくとして。
陽一郎は恵太から、親の薦める相手と見合いをしているという話も聞いていたので特に驚きもなかった。
しかし潤にはそこまで教えていないだろう。
第一、それ以前に陽一郎と潤では恵太との関係そのものが違うので受け止め方も違って当然だ。
とりあえず、恋人を安心させるために、陽一郎は重要な事実を告げることにする。
最初のコメントを投稿しよう!