第1話 いよいよ時が来た。立ち向かわなければならない

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第1話 いよいよ時が来た。立ち向かわなければならない

 ありすは久しぶりの大学の大講義室で真剣に講師を見つめていた。申込者は後で配信のアーカイブも見られると聞いたが、ありすは動画があまり得意ではない。今日のこの九十分一本で得られるだけのものを得たかった。  今黒板の前にいるのは女性ふたりだ。ひとりはありすと同い年と思われる若い女性で、もうひとりは年齢不詳だが落ち着いた声からありすたちからは相当年上だと思われる女性だ。  マイクを通して年齢不詳の女性の声が聞こえてくる。 『慣れないうちはBBクリームひとつで済ませるという手もあります。時短にもなりますしね。ですが今日は最初の一回ですから、きちんと時間をかけたメイクを、ということで、こちらのブラシを使っていくことにします』  白く滑らかな肌、しっかりとまとめ上げられた黒髪、おそらくは制服であると思われる黒いスーツを着て首に青いスカーフを巻いている彼女は、ビューティーアドバイザー、いわゆるBAと呼ばれる職種の人だ。大学側が今回の講座の講師として呼んだ某大手企業のカリスマ社員である。一流のプロフェッショナルだ。
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