第1話 いよいよ時が来た。立ち向かわなければならない

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 本日開催されているこちらの講座、タイトルは『就活に役立つ完璧メイク講座 ~プロが基礎からお教えします~』だ。  ありすは現在大学三年生、もうすぐ就職活動を始めなければならない時期だ。今の今まで言い訳を重ねてメイクから逃げてきたが、いよいよ本腰を入れて取り組まなければならなくなった。  今までかたくなにメイクを拒んできたのは、自分に自信がないからだった。  ありすは小さい頃から父親に似て男顔だと言われてきた。太くて短い眉、大きな鼻、エラの張った輪郭、どこをとっても可愛らしい女の子とは違っていた。  子供時代は気にしていなかった。  気になるようになったのは中学に入ってからだ。  体を動かすのが好きで、父親に連れられて高校野球の観戦を楽しんでいたありすは、中学でソフトボールを始めた。本当は野球をやりたかったが、中学に女子野球部がなかったのだ。けれどそこまで不満ではなかった。日本代表の女子ソフトボールチームが強かったので、ありすはソフトボールという競技に誇りをもっていた。
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