夏休みの思い出

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 先生がくじの箱をカシャカシャ振って、中身をよーく交ぜる。最初は先生がくじを引いた。 「はい、三番!」 「はーい。三番、あたしだぁ」  大野サエコはガタンと椅子を引き、作文用紙を持って黒板の前にいく。 「じゃあ大野さん。お願いします。まずタイトル言ってから、名前ね」 「なつやすみのおもいで。大野サエコ。  わたしは、なつ休みに、おとうさんとおかあさんと、おとうとと、車で水ぞくかんに行きました。イルカショーもやっていてーー」  作文用紙は一枚から二枚。おばあちゃんちに行った、海に行った、遊園地に行ったなど、出かけた話が多かった。もちろん楽しいことばかりではない。雨に降られてイベントが中止になったとか、クワガタを取りに行ったのにカブトムシしかいなかったとか、予想通りにいかないこともある。  そして十二番、戸次ユウタの番号が呼ばれた。ユウタの家は居酒屋を営んでいて、お手伝いをした話から始まった。
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