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ぼくのなつやすみ
「ぼくのなつやすみ。戸次ユウタ。ぼくのいえは居酒屋をやっていて、夕方の五時からよなかの十二時までおみせをあけています。
いつもきまったお客さんがきて、お金をはらわずのんでいきます。それをツケといいます。ぼくは、そのおじさんに、おつまみをもっていって、おてつだいしています」
出だしは順調だった。クスクスと笑い声がして、聞いている人に笑顔を届けた。しかしこの辺りから話の道が徐々に逸れていく。
「よっぱらった人を相手するのはイヤだけど、おてつだいは楽しいし、ぜんぜんイヤではありませんでした。まいにちてつだっていたのですが、十九日だけ、おみせをあけませんでした。おとうさんは夜に別のしごとに行くといって、カッコいいスーツをカバンに入れて、とうきょうのびじゅつかんにいきました。
夜にはたらくのはたいへんだなぁとおもうけど、おとうさんはいつもしごとが早いです。あさにはかえってきていて、おかあさんにいつもおみやげをもってきます。その日はゆびわとネックレスでした。ふたつで三千万はするらしいです。
バールでガラスケースをわって、取ってくるのに三分。三分あればおわるしごとなんて、すごいとおもいました。ぼくも、おとうさんみたいにスゴい人になりたいとおもいました。おしまい」
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