君がいなくなった日

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君がいなくなった日

『ねぇ……なんで?  なんで俺じゃ、駄目だったの?』  責めるような、口調。  真っ直ぐに僕を見つめたまま、聡哉(そうや)が聞く。  だから僕は今夜も、泣きそうになりながら震える声で答えるんだ。 『なんで、って……。  だって僕と君は、友達で。  聡哉のことは大切だと思うけど、でも君に対して恋愛感情を抱くような真似、出来ないから』  こんな事、言うつもりじゃないのに。  今度こそ、好きだと。  愛していると、伝えなくちゃいけないのに。  ……たとえそれが、偽りの言葉であったとしても。  ニタリと彼の口元が、意地悪く歪む。  『アハハ、そうだよね?  知ってるよ。でもね、(はる)。  ……これは全部、お前のせいだ』  その瞬間聡哉の体から、たくさんの血液が噴き出した。  目の前で一瞬のうちに彼の体が血塗(ちまみ)れの、(いびつ)な肉の塊と化す。  嫌だ!違う!こんなのはすべて、まやかしだ!  優しかった聡哉がこんな事を、僕に対して言うはずがない!  散らばった肉塊をかき集め、それを抱き締めたまま子供みたいに泣きじゃくる僕。 『ごめんね、聡哉。  本当に、ごめん。……また君を、助けられなかった』  そこでようやく、目が覚めた。  ガバッとベッドから身を起こし、軽く左右に頭を振る。  汗が額からポタリと零れ、手のひらの上に落ちた。  そのまま震える手で、自身の体を強く抱き締める。  またいつもの、あの夢だ。  ……いくら謝ったとしても、もう彼は戻ってきてはくれないと言うのに。  忘れるなんて、絶対に許さない。  まるでそう、言われているみたいだ。  ふと顔を上げ、壁に掛けられたカレンダーに目をやった。  12月23日。今日は彼の、三度目の命日だ。  そしてこの日は僕の、誕生日でもある。  窓の外は、まだ真っ暗で。  だけどもう眠れそうになかったから、僕はのそりとベッドから起き上がり、汗を流すため浴室へと向かった。
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