月華に照らされる大地を想う

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 ローテーブルの端っこには、トーストを載せた皿とコーヒーが入ったマグカップが置いてあった。猫の顔の絵がプリントされたマグカップ。縁は欠けていない。このマグカップは、一年記念に僕が買ったお揃いのものだ。  彼女は実家暮らしをしている。そのため、お揃いのものを家に置いておくのは気恥ずかしいからと言って、マグカップを僕の部屋のキッチンに置くことにした。  去年の冬の一段と冷えた夜、彼女がココアを作ると言ってキッチンへ向かった次の瞬間、座椅子に座ってテレビを観ていた僕に涙目で駆け寄ってきた。  --ごめん、フライパンにぶつけて、マグカップ欠けちゃった⋯⋯。  彼女の涙目に驚いた僕は、なんだそんなことか、とホッと息を漏らした。  --じゃあ、俺のと交換。唇切ったりすると危ないから。これで見分けがつくようになったね。
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