月華に照らされる大地を想う

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 君の笑い声で目が覚めるなんて、なんて幸せなことなのだろうか。  今日僕を目覚めさせたのは、焦燥させるようなスマートフォンのアラーム音でもなく、脳をも震わすようなバイクの恣意的な爆音でもない。平和で柔らかな君の大きな笑い声だった。  --イケメンで背も高かったから、キザなセリフが似合うよね。  違うんだ。そうじゃない。僕には何もない、なんてボヤいていたけれど、そんな事もない。僕には、交差点で通ったあの男の人よりも何倍も何千倍も有義なものを持っている。  イケメンと付き合ったらいいんじゃないかな、と言ってしまった後の君の本気で怒った顔。その後、少し喧嘩をしてしまったのに、それをまっさらに忘れたかのごとく呑気に眠る顔。それらをこの先もずっと映していられるのは、きっとこの僕の目だ。  今朝の目覚ましになった君の大きい笑い声。その笑い声をきっと誰よりも沢山聴けるのは、僕のこの耳。
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