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そんな素敵なものを僕は持っている。きっと僕は、君といる時の自分が好きなのだろう。そんな単純なことに、五年経ってようやく気付いた。
「おーい、ボーッとさん。どうしたのー?」
「え?」桃色の思考は弾け、急いで左脳にある言語の本棚を整える。「なに?」
「だーかーらー。今日は七時くらいに帰るねって」
君は少しふてくされた顔で、トーストがなくなって茶色いカスが落ちている皿を見ていた。
「今日は少し早いんだね」
「うん。明日、朝早いからさ」
「そっか」頭の中を覗かれないように、できるだけそっけない返事をする。
「何考えてたの? まったく。すーぐ自分の世界に入っちゃうんだから」
ごめん、と低い声で謝り、寝癖を左手で撫でる。
「今度、私もその世界に行かせてよ」
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