月華に照らされる大地を想う

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 天文薄明が終わりかけの暗闇が、掃き出し窓のレースカーテン越しから染み出ている。ナイトテーブルに置いた目覚まし時計が、自身の二つの針で十八時をさしながら、僕らを傍目に見ていた。  ダークブラウンのカーテンを閉めようと、立ち上がりタッセルを外す。 『日本人10人目となる宇宙飛行士の油井亀美也さんが、およそ五ヶ月間のISS国際宇宙ステーションの滞在を終えて、無事地球に帰還しました』  男性アナウンサーの無感情の声が僕の耳を通り抜ける。気付けば、夕方のニュース番組が始まっていた。 「一生に一度でいいから、宇宙に行ってみたいなぁ」君は座椅子に座り、テレビ画面に映る笑顔の宇宙飛行士を観ながらこう言った。 「行けるもんなら、俺だって行きたいよ」彼女を横目に、笑いながら返答する。「ロケットに乗って月を見に行きたいな」
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