月華に照らされる大地を想う

21/24
前へ
/24ページ
次へ
 二人同時にテレビの画面を見やる。 「だってさ」 「クリスマス、空けといてね」語尾をフフッと終わらせ、君は立ち上がった。 「あ、もう十九時か」 「うん。もう七時だよ」  狭く薄暗い玄関で君と二人。この玄関でこうやって見合うのも何回目だろうか。 「実は私も⋯⋯」  君はケイトスペードのカバンに手を入れ、細長い箱を出してきた。オフホワイトのこのカバンは、彼女の就職祝いに僕がプレゼントしたものだ。 「買ってたの」 「あ⋯⋯ありがとう」 「昨日はごめんね。私のせいで雰囲気悪くしちゃって⋯⋯」  つい口元が緩み、自然と首を横に振っていた。「怒られたおかげで、やっと気付けたから。気にしなくていいよ」
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加