月華に照らされる大地を想う

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 山茶花をなでてきたであろう十二月の風が、こげ茶色のルームウェアをなびかせた。一つ身震いをして、スウェットパンツのポケットに手を入れる。すっかり冷たくなったスマートフォンの固い感触を指で感じ取った。 「僕より先に死なないでほしい、か⋯⋯」  日中のショッピングデートで、ビルの大型ビジョンから流れていた歌の詞を、ため息を交えて口ずさむ。そんなことをのうのうと口走る勇気があれば、この暗く寒くみすぼらしいベランダで突っ立って、今こうして遥か遠くの天体を眺めてはいない。どこかのミュージシャンへの小言をそっと胸で押さえ込んだ。  ポケットからスマートフォンを取り出し、画面を開いた。時計の表示は「23:56」。あと数分で『宇宙の呼吸』が始まる。君で散らかった頭をそのままに、急いで部屋へと戻ることにした。
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