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「それは、死ぬってことかい?」
若いカエラが不安げに尋ねた。
「それは違うわ。人ではなくなってしまうけれど、精霊たちの仲間としてドラゴンたちの世界に迎え入れられるの」
マーラは慌てて否定した。
「それならためらう理由がない」
キーナの言葉に魔女たちの賛同が続く。
「でも、でも私は嫌。私はイリアナを離れたくない」
普段はおとなしいマーラが叫ぶ。
「僕もだ。まだやりたいことが山程ある」
アインは強くこぶしを握り締める。
「だから言えなかった。提案者が行かないなんて言えない」
後半は涙声でよく聞こえない。
「馬鹿だねぇ。死ぬんじゃないんだから…… 他にも残りたいものはいるかい?」
キーナの声は優しい。
「まだ半人前の彼ら二人では心配だから、私は残るわ」
カエラの言葉に、キーナはしっかりと頷く。
長く生きたものほど人の世界に未練はないようで、年若い魔女が数人残ることになった。
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