落ちゆく月と最後の魔女たち

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 家の中からはむせび泣く声が聞こえている。 「泣くなよ、マーラ」  そう言ったアインの目にも涙が滲んでいる。 「だって、だって……」  それしか言えないマーラの目から、大粒の涙が落ちてきた。  集まる魔女たちの気持ちがさらに沈んでいくのを感じレイアは笑った。 「しみったれた顔ばかりしないでおくれ」  魔女たちの見守る中、まもなく死を迎える最長老のレイアだが、見た目には若い女性にしか見えない。  レイアは強いものほど若さを保つ魔女なので、最年少のアインとマーラと変わらない。 「僕たちがもう少し早く生まれていれば」  アインはそう悔しがったが、レイアは笑い飛ばした。 「馬鹿をおいいでないよ。お前たちがほんの少し早く生まれたぐらいで何もかわりゃしないさ」  魔女たちの住むこの星、イリアナでは、ドラゴンや精霊の姿を見られなくなって長い。  彼らがいるだけで魔女たちは力を得ることができたが、それももう過去の話だ。  何もできずにいるうちに、後戻りができないところまで来てしまった。  独立したばかりの新米魔女のアインやマーラが、いかな大魔女に成長していたとしても、何かできたはずがない。  魔女はすでに50人にも満たなくなっているのだ。
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