落ちゆく月と最後の魔女たち

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「ドラゴンたちを呼び戻すってのはどうだい?」  最初に口を開いたのはキーナだった。  キーナはドラゴンを知る数少ない魔女だ。 「むずかしいだろうね。今の人の世界はあまりに生きにくい」  レイアは即答した。  食事という形で栄養を取らないドラゴンたちは、自然から出るエネルギーや信じる心を糧に生きている。  科学による発展が人々を豊かにすると同時に、人々は魔法を信じなくなった。  生活は便利になったが、多くのものを失ったことに人々は今も気づいていない。  空も木々も美しい青さを無くしたイリアナは、ドラゴンが簡単に住むことのできない地となった。  変わってしまった自然の輝きに気づいた人もいるにはいたが、それが自分たちに影響のあることとは夢にも思わず、彼らは日々科学の甘い蜜を吸い続けている。 「人々に魔法を思い出してもらうのは?」  その存在を知りさえすれば魔女は増える、そうアインは考えたのだが、先輩魔女たちの返事は芳しくなかった。 「期待薄だね。ここ200年で魔女になったものはお前たち二人だけだから」  二人の次の年若いカエラも首を横に振り続けた。 「人は自分の見たいものしか見ないし、信じたいものしか信じないからねぇ。科学のなせる業と思ってしまうか、異質なものを怖がって魔女狩りの再来が関の山さ」
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