落ちゆく月と最後の魔女たち

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 何も決まらない中、空を見上げたアインは流れ星の光を見た。  あの輝きには、間違いなく魔力が詰まっているとアインは感じていた。  魔力の詰まった隕石が手に入ればとアインは思った。 「流れ星はたくさん魔力が詰まっていそうだから、手に入れる方法があればいいんだけど」  同じことを考えていたマーラがつぶやいた。 「燃え尽きる前に転送でもすれば何とかなるかもしれないが、使った魔力に見合う魔鉱石が手に入るかは微妙だね」  レイアも思案したが、転送にはかなりの魔力がいるので現実的とは言えない。 「そもそも、いつ落ちるかわからない流れ星を観測し続けるのは非効率的だと思わないか?」  もっともなキーナの意見でこの案も不採用となった。  解決策は見つからないまま夜が更け、降り続く雪に室内の温度が落ちてきた。  死が近づき徐々に魔力が落ちてきたレイアは、ここのところ眠っている時間が長い。  だが今日のレイアの意識ははっきりとしていて、時折自分の意見を挟むことも忘れていない。 「問題は月なんだ。あれさえ落ちてこなければ、とりあえずはなんとかなる」  人々は知らないが、月はずいぶん前にイリアナに落ちるはずだった。  魔女たちが魔力で支え続けていなければ、とうの昔にイリアナは月の終わりと共に赤く燃える死の星となっていたに違いない。  他にも問題はあったが、月が落ちてきたりしなければ何とかなる、レイアはそう言っているのだ。 「言いたいことはわかるが、月を支えるのも限界だろ?」  キーナの意見は最もだ。  魔女の数が減ったのはもちろんだが、それ以上に無視できないのが魔女ひとりひとりの実力だ。  全盛期の魔女たちと比べられないほど魔力が小さい今の魔女の力では、月を支える力も風前の灯だ。  レイアが目覚めない眠りにつけば、残された魔女たちだけでは月は落ちるしかない。
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