落ちゆく月と最後の魔女たち

9/15
前へ
/15ページ
次へ
「大きなまま落とすわけとでも思っているのかい?」  自身に仲間の不安げな視線が落ちてきたことに気がつき、心外だといわんばかりの口調でレイアは言った。  怒っているのかと思ったが、目は笑っている。  魔女たちはほっと胸をなでおろし、話の続きを待った。 「マーラの流れ星の話とセレアの月を落とそうって話のおかげで、何とかなりそうな気がしてきたよ」  話を聞いてみると、月を砕こうとしているのは間違いないようだが、キーナは納得がいかない。 「今の魔女たちだけで月を砕くのは無理じゃないか?」  大量の月の欠片が落ちてきたらたまったものではないが、影響のない大きさまで粉砕しようと思えば魔力が足りない。 「粉々には、砕かない?」  アインが遠慮がちに聞いてくる。  レイアはにやりと笑って頷いた。  アインはさらに考えながら慎重に言葉を重ねる。 「月をいくつかに砕いて、空に残す? 小さくなれば小さな魔力で支えられるってこと? でもそれだと、集めれば同じだけの魔力が必要なんじゃ……」  小さくしても結局一緒な気がしてアインは混乱した。  レイアがこんなことに気づかないとも思えない。 「もしかして、月が本来持っている魔力を取り戻させるってことかい?」  キーナはなるほどと1人納得している。  月はとても大きな魔力を内に秘めているが、取り出すことが難しい。  だが、砕いてさえしまえば封じられた魔力は解放される、そうレイアが考えていることにキーナは気がついたのだ。 「ああ、そういうことか。月の内に秘められた魔鉱石に魔女の魔力で刺激を与えれば、月は自ら浮き始めるということだね」  助かる可能性に、アインは目を輝かせる。 「で、でも、砕いた時にできる欠片は? イリアナに無数の月の欠片が落ちてきたとしたら、被害は考えるだけで恐ろしいわ」  マーラはアインのように楽観的にはなれない。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加