あなたが触れた指の先から

1章

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東吾と出会ったのは24歳のとき。
2年連続で出ていたフルマラソンの抽選に落ちて、それならばとエントリーした大会のボランティアで知り合った。

年齢が同じことや、学生時代は運動嫌いで大人になってからマラソンを始めたことが共通して意気投合。
説明会や研修を一緒に過ごし、大会当日の解散後、駅までの帰り道でわたしから食事に誘った。

2年付き合って26歳で結婚。
そこからわたしが家を出るまで丸4年。

わたしたちはうまくいっていたと思う。

フルタイムの共働き。家事も生活費も折半。
アウトドアの活動が好きでよく一緒に登山や釣りに出かけたり、マラソン大会に出たりした。
見たい映画には一緒に行ったし、お互いの実家にもよく泊まりがけで遊びに行った。

誰が見ても円満なおしどり夫婦だった。

ただ、わたしたちの間にはセックスがなかった。

貯金しながら生活できるだけのお金も、そこそこ立地のいい2LDKのアパートも、共通の趣味も一緒に過ごす時間も十分にあった。

セックスだけがなかった。