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◆◆◆◆◆ 気が付くと俺は雪の上に転がっていた。 全身が痛い。 しかしその痛みは落下による衝撃ではなく、寒さによるものだとわかるまで、そう時間はかからなかった。 唇から肺にかけて凍り付きそうに冷たい。 口の中の唾液をかき集めて飲み込むと、そこから喉、気管、胃と、順に痛みが走った。 身体を起こす。 「―――松明は…?」 辺りを見回すと、雪の上に落ちながらも、松明は奇跡的に炎を保っていた。 それを掴み炎の明かりであたりを照らす。 ーーー闇だ。 闇の前に真っ白い雪が舞い、余計に闇を濃くしている。 「――寐黒高校は?」 俺は腕を伸ばし、前方を照らした。 それでも――――。 どこまでも闇が広がっているばかりで、高校は愚か、杉の木1本、見えなかった。 「――逃げるなって、言ってんだろ……!」 俺は闇に向かって呟いた。 音もなく深々と雪が降る。 「お前ら……」 ふつふつと怒りが湧いてくる。 確かに、寐黒町の大火事は悲惨だったと思う。 炎に追い込まれ、閉じ込められ、焼け死ぬしかなかった人々の苦しさと無念は俺なんかには想像できない。 でも。 それでも――――! 「湊斗は関係ないだろうが!」 俺は闇を睨んだ。 「湊斗を返せ!!!」 叫んだ瞬間、その声に反応するかのように、雪がうねった。 「う……ぐ……っ!」 先ほどまで、上から下にただ静かに降りていた雪は、突如として勢いを増し、うねり、歪み、俺の頬を刺すように舞い上がった。 「ーー上等だ!やれるもんならーー」 キ―ーーンコ-ンカーーンコーーーン 俺は振り返った。 「……上等だ……!」 闇の中に、 寐黒高校が建っていた。
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