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高く聳え立つそれは、自分が昨日まで通っていた校舎にはとても見えなかった。 白かった外壁は黒く焦げ、窓ガラスは割れて、カーテンは破れ千切れてゆっくりと揺れている。 「――――」 不気味で禍々しい気配。 怒り、 悲しみ、 憤り、 憎しみ、 苦しみ、 痛み。 校舎全体から漏れ出してくる負のオーラに、 足が怯みそうになる。 身体が縮み上がりそうになる。 心が折れそうになる。 ―――でも。 3年前、湊斗は、寐黒島に吸い込まれようとしていた俺を助けてくれた。 亡霊たちに精力を吸い取られながら。 自分はあんなに廃人になっているのに。 そして昨日、再び俺のことを助けてくれた。 自分はこの寐黒島に残って―――。 「―――そんなの、見捨てられるかよ……!」 脳裏に今度ははっきりと月岡の顔が浮かんだ。 「今度こそ……助けるんだ!」 俺は松明を握りしめると、吹雪の中、迫りくるように歪んで聳え立つ、寐黒高校に向けて地面を蹴った。
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