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「東藤…!ありがとう!!」
俺は転がった松明を拾い、慌てて階段を上った。
「湊斗が屋上に…!」
俺が言うと東藤はチッと舌打ちをした。
「知ってる。あいつ、湊斗のことを喰いきるつもりだ」
「あいつ?」
やっと階段を上がり切り、ドアノブに手をかける。
「………開かない…!」
鍵がかかっているのか、それとも誰かが押さえているのか、昨日はすんなりと開いたのに、押しても引いても開かない。
後ろからは炎が近づいてきている。
「―――どけ」
「え?」
「いいから、どけってんだよ!」
東藤が叫んだ瞬間、その足がドアの蝶番を蹴破った。
開け放たれたドアから、容赦なく雪が吹き込んでくる。
水分をふんだんに含んだ吹雪で、たちまち松明が消えてしまった。
のどに入り込んだ冷気に軽くむせ、腕で雪粒を防ぎながら、俺はなんとか目を開けた。
「―――湊斗……!」
屋上の真ん中。
力なく倒れている湊斗の上に―――。
黒く巨大な蜘蛛が跨っていた。
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