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「――――」 俺はこちらを睨んでいる蜘蛛を見下ろした。 「わけもわからんねえうちにふっとんだ2年4組のやつらとは違う。逃げまどい、炎に追い込まれ死を覚悟した他のクラスの生徒たちとも違う。この保健室でただ一人、腹の痛みと戦いながら、炎に巻き込まれた恐怖は、相当なものだったろうな……」 東藤は小さく息を吐くと、蜘蛛を改めて睨んだ。 「俺はそれをすべてここから見ていた」 「―――屋上から?」 「ああ」 「爆発も、火事も?」 「ああ」 「………逃げなかったのか?」 「火の勢いが強すぎて。1階も2階も炎に包まれてたんだ。なんとか階段で3階までは降りたが、煙を吸い込んで―――」 そうか。 だから彼は―――彼だけは、自分たちが死んでいることに、はじめから気づいていた……。 「湊斗やお前は知らないだろうが、小浜は当時、女子を中心にいじめられてたんだ」 「―――いじめ?」 確かに好かれていないような空気は感じたが―――。 「それもあって、生理痛が辛くても、帰ったらまた反感を買い、いじめがエスカレートすると思って帰れなかった。痛いのをこらえて、保健室で我慢していたんだ」 蜘蛛がそろりそろりと湊斗の体から降り、こちらに近づいてきた。 「だから生への未練が人一倍強い。寐黒高校への恨みが人一倍深い」 東藤は巨大な蜘蛛を睨みながら言った。 「あの世とこの世の狭間にこんな中途半端な空間を作り、クラスメイト達を閉じ込めたのは、あの女だったんだ」
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