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蜘蛛が近づいてくる。
俺はよろよろと立ち上がり、転がっていた松明を拾おうと屈んだ。
その瞬間、すごい勢いで8本の足が動き始めた。
「……う!」
突き飛ばされ、口から何か白いものを吐かれた。
「ぐあッ!」
直撃された顔が焼けるように痛い。
「竹原!」
松明を拾った東藤が叫ぶ。
「この……!!」
俺は焼けるような痛みをこらえながら、蜘蛛の体を蹴り上げた。
何か短い悲鳴のようなものを上げて、蜘蛛がひっくり返る。
「今だ!ライターで火をつけろ!!」
東藤が松明を投げてよこす。
俺は慌ててそれを受け取り、胸元からライターを取り出した。
「―――――?」
ーーーなんだろう。
何かが引っかかる。
「なにしてる!早くしろ!」
東藤の叫び声で我に返ると、俺は慌てて松明にライターを翳した。
一度消えたとはいえ、松脂の効果は健在で、松明はたちまち燃え上がった。
たちまち元に戻った蜘蛛が、再び湊斗の上に跨るように乗っかる。
「燃やせ!蜘蛛を!」
東藤が叫ぶ。
「小浜を逝かせてやれ!」
「でもこのままじゃ湊斗まで……」
「そいつは大丈夫だから!早く!」
俺は頷くと、松明を両手でつかんだ。
「うおおおおおお!」
自分に気合を入れるように蜘蛛に向かって走り始める。
この世とあの世の中間。
寐黒島を生んだ現況。
「湊斗を返せ!!小浜!!」
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