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叫ぶと、蜘蛛はピクリと反応した。 そして、諦めたように力を抜くと、ゆっくりと湊斗の上から降りた。 「……………」 俺は足を止めた。 「おい……、何してる?チャンスだぞ!」 東藤が声を荒げる。 ―――だって。 この蜘蛛、さっきからーーー。 喰らおうとするどころか、 ないか……? 俺はゆっくりと振り返った。 「ーー東藤」 蜘蛛と俺を交互に睨んでいる東藤に向けて、静かに口を開いた。 「お前、さっき、松明を俺によこしたよな。ライターで火をつけろって」 「は?こんなとき、何を言ってんだよ?」 「俺がライターを持っていることをなんで知ってた?」 「――――」 東藤が眉間に皺を寄せる。 「ーーいや、って言うより」 俺は額を強く撫でた。 「お前なんで使?」 「―――――」 東藤は口を結んで黙った。 彼はしばらく俺を睨んでいたが、やがてふっと笑うと目を伏せた。 ーーーやっぱり、そうか。 言葉を発しない彼に、俺は静かに口を開いた。 「俺は何も、お前を攻撃したいわけでも、ましてや倒したいわけでもないんだよ。願うのはただ一つ。お前や、この町が抱える恨みつらみとは、何も関係のない湊斗を解放してほしい。それだけなんだよ」 俺は松明を持っていない左手を、彼に向かって差し出した。 「………な、小浜」
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