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◇◇◇◇◇ 「へえ。小浜が……ねえ」 居間に上がった堀田に、ことの顛末を一部始終話して聞かせると、彼は頭を整理するように小刻みに頷いた。 「確かにいじめられていたといえば、そうだったかもしれない。何せ小浜は学年でもダントツで美人で、男子からモテたからな……」 堀田の口からその言葉が出るくらい目立っていたということは、確かに麻子の人生は、彼女自身が言う通り、”これから”だったのかもしれない。 そう考えると、彼女もまた、寐黒島の被害者の一人だったのだ。 「それで、これは?ずいぶん古めかしい携帯電話だな」 「ああ、これは――――」 ーーー言葉が続かない。 なんでもないことなのに。 寐黒島に連れて行ってくれた堀田にはむしろ話して当然のことなのに。 「ん?なんだよ?」 堀田がきょとんとした目でこちらを見下ろす。 「これは、祖父ちゃんの携帯」 とっさに嘘をついてしまった。 「へえ。ずいぶん懐かしい機種使ってるな。俺たちが学生の時に流行ったモデルだよ」 堀田は珍しそうにしげしげと見つめた。 「でも……」 その黒い目がこちらを見つめる。 「泰造さんなら、さっき、集会所の方に歩いて行ったけど?」 「……はは。お年寄りって携帯を携帯しないよな」 言っても堀田は笑わなかったが、一息つくとやがて立ち上がった。 「帰省は今日か。気をつけて行けよ、少年」 「はい。ありがとうございました」 俺が頭を下げると堀田は小さく頷いた。 「あの、堀田さん……」 「なんだ?」 「これで……よかったんですよね?」 言うと彼はふっと笑った。 「これ以外に方法があったか?」 「……いえ」 堀田はそれ以上何も言わずに玄関戸を豪快に開けると、そこから雪の積もった外へ出ていった。
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