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一人残された部屋で、俺は光っている携帯電話の液晶を見つめた。 「―――」 充電が少しは溜まったのだろうか。右上にある電池のようなマークが少し緑色に染まっている。 とりあえず中央の丸いボタンを押してみると、ずいぶんと画像が荒い液晶に、幼稚なイラストが並んでいる。 「……これを、どうしろっていうんだよ。東藤」 独り言を発しながら、デタラメにボタンを押してみると、発着履歴の画面になった。 「もしかして、これと話せばあの世と繋がる、とか?んなアホな」 俺は笑いながら、再びデタラメにいじり始めた。 と、画面が黒くなり、時間差で無数の写真が表示された。 ーー画像フォルダか。 指が勝手に液晶を触りスクロールしようとしてしまい、俺は苦笑して指をボタンに戻した。 東藤の仲間たちだろうか。柄の悪いチンピラ達がピースしている。 「……ん?これは?」 一番上の画像を拡大してみる。 それは間違いなく屋上からとった写真だった。 雪が降り続くグラウンドには誰もいない。 同じような画像が何枚も続く。 ―――盗撮?あいつ、屋上で何やってんだよ。 首を傾げながらも次々と画像を見ていく。 「――あ」 誰もいない校舎の外側。昇降口からロータリーにかけて、誰かの人影が見える。 学ラン? 寐黒高校の生徒か? 次の写真を見る。 また、次の写真も。 少しずつ校舎に近づいてくる生徒は、下駄箱がある正面玄関には回らずに、渡り廊下の外側から迂回し始めた。 「―――なんだ?」 俺は胡坐をかいて両手で携帯を握ると、食い入るように見下ろした。 中庭の中心まで来て、男は視線を前後左右に振った。 まるで人がいないのを確認しているかのように。 男が学ランの胸から何かを取り出した。 これは―――。 瓶? その中に揺らめく赤い炎が見えて、俺のこめかみを冷たい汗が伝っていく。 男が覗いているのは、保健室の脇の階段を超えた、用務員室の隣。 ーーーボイラー室だ。 「おい……」 俺はコマを送りながら、思わず写真の中の男に呟いた。 「何を持ってんだよ……」 写真の男がズームになる。 その手元も大きく映し出される。 火炎瓶? 「……おい、やめろよ」 男はそれを左手で振りかざすと、窓から投げ入れた。 「――――!」 次の写真は、真っ白い閃光が四方に飛び散り、よく見えなかった。 ーーー放火。 その単語が頭に浮かんだとたん、全身に悪寒が走った。 携帯電話を置くと、いつの間にか目の前には、左手に鉄のスコップを持った、堀田が立っていた。
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