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「―――?」
しかしいつまでたっても衝撃が来ない。
痛みも感じない。
「―――?」
俺は目を開けた。
「………!………っ!…………っっっ!!!」
堀田がスコップを振り被った状態で静止している。
その目は俺でも、スコップの先でもなく、自分の手の甲あたりを見つめている。
(なんだ?どうしたんだ……?)
「……あ」
彼の手の甲に1匹の蜘蛛が付いていた。
ゾワゾワと服が動き、袖からもう1匹、黒い蜘蛛が出てきた。
「―――や、やめろ……」
彼が呻くのと同時に、手首から、足首から、ベルトから、首元から、次々と蜘蛛が這いだしてきて、彼の全身を覆い始めた。
「――――やめろ!!来ルなぁあ!!アあぁァあア!!!」
割れた悲鳴が響く。
彼は全身を無数の蜘蛛に包まれた。
「―――た……」
かろうじて見える彼の突き出した目がこちらを見る。
「―――たスけテエ!!」
その声も蜘蛛の中に吸い込まれていくと、やがて堀田の形をしていた蜘蛛の塊は、土台をなくしたようにバッと音を立てて畳の上に散らばり、やがて茅葺屋根の中に吸い込まれていくように消えていった。
俺はその場に座り込むと、肩で息を繰り返した。
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