叶うか分からない夢に向かって努力し続けるのは、終わりのない地獄みたいだ。

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『今、いい?』  休日の午後4時。薄暗くなった自室のベッドに寝転んでアプリのパズルゲームにいそしんでいると、杏里からLINEのメッセージが届いた。  約1ヶ月ぶりに杏里とのトークルームを開いて、「お誕生日おめでとう」に返事をしていなかったことに今更気がついた。 『なに?』  一言だけ返すと、電話がかかってきた。上半身を起こし、スマートフォンを耳に当てる。 「久しぶり。元気だったー?」  杏里の声を聞きながら、「底抜けに明るい」っていうのはこういう人を言うのだろうな、と思う。 「まあまあ。杏里は?」 「元気だよ!」  だろうね、と苦笑する。 「そういえば、カナ、あたしの本読んでくれた?」 「あ、ごめん、まだ読めてない。最近忙しくて」  目を泳がせてしまったが、電話だから気づかれる心配はないだろう。 「ふうん。そうなんだ。じゃあ手紙は?」 「読んだ、けど……」 「なら話は早いや。カナの挑戦と夢の話、聞かせてくれない?」 「挑戦と夢? なんで突然」  眉をひそめる。 「いいからいいから。聞かせてよ」  何を企んでいるのか知らないが、こうなった杏里は、話を聞くまで私を解放してくれない。  それに、と思った。それに、褒めてほしいと思った。すごいね、そんなことに挑戦してるんだね、と感心されたかった。  口を開く。 「私、実は」  言葉に詰まった。私が小説を書いていることは、面識のある人に明かしていない。 「何? 聞かせてよ。絶対に馬鹿にしない。挑戦はどんなものでも尊いから」  じゃあ、と話し始めた。小学生の頃から、思いついた話をノートに書き留めていたこと。今は小説投稿サイトで細々と活動をしていること。
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