再会(Side亮祐)

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再会(Side亮祐)

長期出張で日本を経って約1ヶ月半。 だいぶ落ち着いてきたが忙しい日々だった。 このままいけば契約締結に漕ぎ着けられそうで、大塚フードウェイの海外事業にとって大きな動きとなるだろう。 仕事は順調に行きつつあるが‥‥。 百合の顔を思い浮かべる。 思い浮かぶ百合はいつも笑顔なのがせめてもの救いだ。 これで泣き顔ばかりが出てくるようなら、俺はいよいよ不安で押し潰されるだろう。 百合とは関係がギクシャクしたままで、話し合うことなく日本を発ってしまった。 百合は正直に包み隠さずに自分の過去を話してくれただけだ。 それも俺が聞いたから答えてくれたのだ。 なのに俺はそれを聞いてから疑念を取り払えずに、そして百合に聞けずにいるのだ。 (自分がこんなに臆病だとは思わなかった。本当に情けない。百合のことになると自分がコントロールできなくなってばかりだな‥‥) 百合とは定期的にメッセージのやりとりは交わしている。 「体調は大丈夫か?仕事はどうか?」など、俺を気遣うものだったり、「今日は同期の響子と女子会をした、オンライン英会話を頑張ってる」というちょっとした近況報告だったりだ。 俺も同じようなことを返信している。 最近は「どこのホテルに滞在してるのか?いつも何時くらいに戻るのか?」と、やや細かいことを質問されたのは記憶に新しい。 こうやってメッセージで繋がってはいるが、たまに不安に襲われる。 もし俺がメッセージを返さなければ、百合も送ってくることはなく、そのまま去って行ってしまうのではないか‥‥と。 彼女は基本的に受け身であり、そしてかつては“来るもの拒まず、去るもの追わず”だったのだ。 果たして俺に対しては違うと言い切れるのか。 俺がなにもしなかったら、そのまま百合は俺の手をすり抜けていくのではないかという不安が拭えないのだ。 「百合‥‥」 1人になったオフィス内で俺は百合の名を思わず小さく呟いていた。
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