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「‥‥亮祐さん!」
後ろからハグされたことで俺に気付いた百合は驚きで身を硬くしている。
「まさか百合がニューヨークにいるなんて。驚いてるのは俺の方だよ。いつ来たの?」
「今日の昼頃です。それよりちょっと、こんな人前で恥ずかしいです。ふ、普通に座って話したい‥‥!」
耳元まで真っ赤にする百合が本当に可愛くて仕方ない。
ニューヨークまで来てくれたという嬉しさもあって、さっきまでの疲れなんか吹き飛び、俺の心は高揚している。
「海外だしこんなの普通だよ。でもまぁ百合がそういうなら」
俺はハグを解いて、百合の前の席に座り、百合を真正面から見る。
(あぁ、久しぶりの百合だ)
約1ヶ月半ぶりの百合は特に変わっておらず、俺の知っている百合だった。
そのことにひどく安堵する。
「仕事休み取って来たの?ニューヨークに来たのは何か理由でもあって?」
「そんなの亮祐さんに会いに来たに決まってるじゃないですか‥‥!」
「百合が俺に‥‥?」
それはとても意外なことだった。
百合が俺に会いたくて自分から行動に移すなんて、しかも国内ではなく海外へだ。
「‥‥意外ですか?」
「うん、正直言うと驚いた。百合が自分から動くことってなかったから」
「そうですよね。私っていつも受け身ですよね」
自嘲めいた笑いを漏らす百合を見て、何か心境の変化でもあったのだろうかと感じた。
「あの、突然押しかけて来てごめんなさい。それで、亮祐さんの都合のつく時でいいから、もし良かったら少し時間が欲しいんです」
「もちろん。むしろニューヨークに百合がいる間はここに一緒に滞在して欲しい」
「えっ?でも私泊まるところはもう予約してあるし‥‥」
「そんなのキャンセルすればいい」
俺はそこを譲るつもりはなかった。
せっかく百合がニューヨークにいるというのに、別々にいるなんて馬鹿馬鹿しい。
キャンセル料がかかろうと、そんなの百合と過ごす時間の価値に比べると大した事ない。
「さぁ、とりあえず俺の部屋に行こう。百合もそのまま泊まっていけばいいよ。荷物は明日昼間にでもホテルから取っておいで」
有無を言わせずに俺は百合を説得すると、百合の手を引き、部屋へと導いた。
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