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「お昼は海の見えるレストランで、優雅にパスタを食べるんだ。もちろんワインはビンテージもの。」
『あ~っ、美味しい!このワイン、高かったんじゃない?』
『君の笑顔に比べたら安いもんさ。』
「そして、お昼を食べたら水族館へ行くんだ。」
『はぁ、凄く神秘的、、、。』
『あぁ、まるで宝石箱みたいだ。』
「最後に、海辺の道で言うんだ。」
『あなたを愛しています。僕と付き合って下さい!』
『、、、私もです。ぜひよろしくお願いします、、、。』
「、、、終わった?」
「うん。」
「、、、はぁ、、、長すぎだろっ!妄想が!あとちょくちょく出てくる会話、、、イタ過ぎっ!これ、小説だったら読者が置いてけぼりになるやつだからっ!!」
長々してまとまりがないツッコミをしたのが、現在大学2年生の加藤隆一20歳だ。
「妄想じゃない、想像だよ。そして、ロマンチックだと言ってくれ。」
そしてこのロマンチストが、僕、石川翔太。隆一と同じ大学に通う大学2年生、20歳である。
「お前、今日ホントにサシ飲みで良かったな。こんな妄想、酔ってても言わんぞ。ましてや、素面で最初の話題がこれって、、、引くどころの騒ぎじゃなかったぞ!」
隆一のツッコミはお酒が進む。僕は、残っていたレモンサワーを飲み干した。
「想像なんてね、言わなきゃ始まらんよ。言って叶えるのが一番理想!」
我ながらドヤ顔だったと思う。
「、、、それはそうだけども、、、。てか、その妄想の相手は小咲さんってことでいいんだよね?」
「な~にを当たり前のことを!」
小咲さんとは、僕たちが所属しているサークルのひと学年上の先輩にあたり、とても綺麗で性格が良い、完璧な人なのだ!
「止めとけ止めとけ!高嶺の花すぎるって!お前には高橋りなっていう女がいるじゃないか。」
高橋りなとは、僕とは小中高大一緒でサークルまで同じと言う、ザ・幼馴染である。ラブコメじゃあ、負けヒロイン確定の間柄である。
「あぁ、りなねぇ。あいつ彼氏いるよ。」
「えっ!?りなちゃん彼氏いるの!?聞いてないよ~!ワンちゃんで狙ってたのに~!!」
隆一がギャーギャー喚いている中で、ひとつだけはっきりさせたいことがある。僕は後にも先にも、りなのことが好きになることはない。それは、逆も然りだ。フラグでも何でもないことを理解して欲しい。高校生の頃、興味本位で聞いたことがある。『りなって僕の事好きなの?』、、、思いの外冷たい眼差しを向けられたのを覚えている。その時は流石に少し傷付いた。
「すいませ~ん!レモンサワーをお願いします~!!」
飲まなきゃやってられないみたいな雰囲気で、隆一が注文する。僕たちはまだ大学生なので社会には出ていなかった。
「てかお前、ロマンチックな事好きだから、すぐ人の事好きになりそうだな。今回の好きもそれなんじゃないか?」
「ロマンチックな人がすぐ人を好きになるのなんて、そんな漫画じゃあるまいし。恋なんて中2以来だよ!」
だから隆一よ、そんな意外そうな顔をするな。
2時間後、
「酒の肴がなくなった!」
と隆一が言ったので、僕たちは会計をした。『僕の想像惚気で良ければあるよ。』と言ってはみたが、却下された。
「じゃ~また学校で~。」
そう言って僕たちは別々の電車に乗り込み、帰宅後、学生マンションの一室にダイブした。
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