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フルーツパフェ
歌川 琴香十九歳。私の人生はいわゆるイージーモード。ハッキリ言って相当モテる。
高校時代まで全くと言って良いほど見た目に無頓着だったから、誰も私になんか見向きもしなかった。でも、大学入学に向けて十キロの減量。初めて雑誌に載るような美容室に行き、ファッション雑誌を手に服を揃え、劇的な変化を遂げた。素材が良いことに気づいたのはその時。
でも、容姿が良いだけでそんなにモテるはずない?それはね、長い不遇時代に、現実逃避するように、夜な夜な連ドラを見漁っていたお陰。大学デビューの完璧な容姿に加えて、完璧に計算されたあざとさで私は瞬く間にキャンパスで不動の地位を築いた。
「ことか、次の5限教室変更だって」
「あっ、奏!」
奏は、大学で出会った友人だ。明るくて優しくて、かなりの美人。すらっとした細身で、遠くでもよく目立つ。私みたいな大学デビュー組じゃなくて、奏は生まれた瞬間から美人だったのだろう。言葉でうまく言えないけれど、そっち側の人の余裕がある。
「ことか、学校終わったら時間ある?」
「ごめん、今日あっちゃんの日なんだ」
「またぁ?もー、その内痛い目見るからね?」
「大丈夫、今朝も見てきたもん。バイブル」
「それって、平成ドラマでしょ?」
「今朝は、少年漫画も」
「はぁー。あっ、それより今日のレポートやったの?」
「もっ、もちろん!奏には前回迷惑かけたらかね、今回はバッチリ」
「見せて?」
奏は、私のレポートを手に取るとペンでトントンと要点を確認しながら目を通した。
「うんOK。ことか、根は真面目だもんね」
奏の笑った顔が好きだ。
入学初日。信じられないくらいの男子に囲まれた。SNSを聞かれたり、サークルに勧誘されたり。予想外の展開に豊富な連ドラ知識もすっかり吹っ飛び、私はただただ怯えて俯いた。
「あなた、大丈夫?」
同じくらいの男子と、さらには女子の大群をも後ろに引き連れた奏が話しかけてくれたのだ。
「何部?」
「経済学部、です」
「同じだ!行こう」
本物の人気者はきっとこうなのだ。誰にでも分け隔てなく優しい。自分の容姿を鼻にかけたりしない。私の中身も、奏は、分かってくれる。彼女みたいな魅力的な子になりたい。私が今でもずっと思っていることだ。
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