9人が本棚に入れています
本棚に追加
ポップコーン
「ことちゃん、お疲れ様、どうぞ」
「あっちゃん。ありがとう」
大学の近くのカフェで私の好きなキャラメルラテとパンケーキを頼んで待っていてくれた彼はあっちゃん。近くの有名大学に通う二つ上の人だ。っと、思う、、、。
「今日は、学校どうだった?また誰かに声かけられたりしなかった?」
「しなかったよ。ずっと、奏といたから」
「そっかー。安心した。パンケーキ美味しい?うん、良かった!!」
爽やかで、ノリが良くて友達が多い。何より、優しい。
「それでさ、ことちゃん、僕たちそろそろさ」
私はあっちゃんがそう言う話をし始めるタイミングが分かる。だから、その言葉を聞く前に席を立つ。
「ごめんね。また今度お話聞かせてね。私もう行かないと。とぉっても美味しかった!ありがとう。」
キャラメルラテとパンケーキに感謝して、私は微笑み手を振る。
「あ、あぁ、またね」
ちょっと唇を閉じて寂しげな表情をするのがポイント。あっちゃんは、(まぁ、いいか。今度で。あぁ可愛いなぁ)という顔をして私を見送る。
夕方、駅ビルで待ち合わせ。
「ことかー。お待たせ」
「ううん、大丈夫。あっちゃん今日は、薄手のコートが欲しいんだけど選んでくれる?」
「勿論」
スタイリストをしているこのあっちゃんは、いつも私の服を選んでくれる。時間がある時は髪を切ってくれたり、とにかくセンスが良い。
「色とか、希望ある?」
「特には。でも合わせやすいのがいいかなぁ?」
「なるほど、あーっと、これはどう?」
彼はキャメルのトレンチコートを差し出した。
「ほら、裏地が可愛いよ。今年、襟とか裏地がチラッと見えるのが流行りだからね」
「ホントだ。でもちょっと、太って見えない?」
「えぇ?ことかは細いから大丈夫。ラインも悪くないと思うけど」
「うーん」
「じゃあ、他の店にも行ってみよう」
学生のあっちゃんと違って、包容力がある。結構有名で、cmやドラマの担当もしているとか。
いくつかのコートを試着して、ベーシックなステンカラーコートを購入した。着回しやすい“グレージュ”。
「あっちゃん、ありがとう。とっても気に入った!」
「プレゼントしたかったのに」
「いいの、自分で欲しかったから」
「じゃー、代わりにこれ。そのコートに合うの選んでおいたから」
「え?」
「ワンピース。今度はこれを着て見せて」
「えっ、ありがとう。でも、、、」
「プレゼントしたかったって言ってるでしょ?僕のわがままだから、受け取って」
「わかった。ありがとう、次に会える時絶対着てくるね」
「うん、楽しみにしてる。夕飯はどうする?」
「あっ、ごめんね。この後約束があるんだ、、」
「そっか、じゃあそこまで送る」
「いいの?嬉しい」
身につけるものは、基本的に自分で買う。美味しい時間、楽しい時間をあっちゃんと共有したいと思っている。最大限の感謝と、ちゃんとした線引き。それが自分の中でのルール。
夜、スペインバルで待ち合わせ。
「こと!お待たせ!」
「あっちゃん。お疲れ様。ここ、初めてくるね。美味しい?」
「おぅ!」
営業職のあっちゃんは、物知りで聞き上手。
最初のコメントを投稿しよう!