7.乃井朱音

6/7
前へ
/217ページ
次へ
「では時間もありませんし、今日は生徒が主体となって進めることになっておりますので。えー、市条高校の代表の子から、発表を宜しくお願いします。」 教師の挨拶の後、シーンと体育館は静かになった。 辺りを見渡す子が複数人居る。 遠く離れた場所で、音がする。 ゆっくりと体育館を踏む音、一定のリズムで歩みを刻むその人の頭が集団から抜け出て、舞台下で一礼すると階段を上がり始めた。 右手にも左手にも資料は無い。 階段を上がってもう一度、その人は一礼する。 舞台の右端に置かれた教壇の後ろで、その人は足を止める。振り返って体育館に向いた彼は、深く綺麗にお辞儀をした。 「っ、」 顔を上げた瞬間、きっと皆んなが息を呑んだと思う。 カタッ… 「光ケ丘高校一年生の皆さん、こんにちは。本日はご多忙の中、御校にお招き頂きありがとうございます」 「…」 「先生から説明があった通り限られた時間になりますが、お互いに有益な時間になればと思っています。どうぞ宜しくお願いします。」 「…」 「市条高校を代表して、私"乃井朱音"が、発表をさせて頂きます」  ────
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加