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「金がない」
そう言って風音に何回もお金の無心をしてくる。
風音だって、最低限の賃金で最低限の生活をしている。
それなのに「金がない」と言えば
風音が必ずお金を用意する事になっていた。
もし、風音が拒んだら、街に借金をしに行くだろう。
借りたからと言って返金は後回しにする事が前提の彼等だから
最終的に風音に取り立てが来る。
それを思うと、断るより有り金を渡してしまった方が
返済の恐怖から逃れられると心から思えて請求に従っていた。
『男と名のつく生き物はどうして金の無心ばかりするのだろう』
そんな鬱々とした気持ちで公園のベンチに座って
スーパーで買ったお買い得のパンを食べていた。
その時、手の平に何かが落ちてきた。
空を見上げると、ただ青いだけで
雲一つない。
手の平に残ったものに目をやると
あなたの欲しいものは何ですか?と
メッセージがある。
風音は、ふっと自嘲の笑みを浮かべると
「彼氏かな」
と呟いた。
あれほど金の無心に疲れているとぼやいていたのに
そこから救ってくれるのもまた
『男と名のつく生き物』だと思っている自分が愚かである。
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