舞い降りて湧いた恋

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仕事に戻る時間だ。 今日は祝日で、世間一般では休日である。 公園には風音と変わらない年齢の男女が 当たり前のように、お互いを伴侶としてチームを編成している。 風音のチームメイトは、金の無心をする父親と、 金の無心をする弟と 忘れた頃に金の無心をする元カレ?今カレ?だ。 立ち替わり入れ替わり 金の無心を繰り返す。 何だかどうしようもなく惨めな気分になり ぶわっと、視界が滲んだ。 その瞬間、何かがぶつかってきて膝をついた。 惨めすぎて羞恥心も飛んでしまった。 自暴自棄になってそのまま四つん這いになっていると 「大丈夫ですか?」 我に返って、空返事をしながら立ち上がろうとした風音は 声の主が目に入った途端、今度は腰を抜かして尻餅をついた。 なぜなら、嘘のような端正な顔立ちの青年から 絵に描いたような美しい微笑みが放たれているからだ。 それも、風音に向かって。 風音は反射的に比較で頭がいっぱいになった。 今朝の自分が呪わしい。 なぜもっと、身なりに気を配らなかったのだろう。 手で撫でつけて(ゆわ)いた髪、 着過ぎて気持ちよくなったティシャツ、 作業がしやすいようにとはいえ履き潰しているGパン・・ ・・・ついでに体型から顔のサイズに至るまで 何もかもが、輝きを放っている微笑みをもらうに値しない。 穴があったら入ってしまいたかった。 そんな風音の不振な挙動などお構い無しに 目の前の王子様は、スッと手を出して いとも簡単に風音を立ち上がらせた。 そしてもう一度 「大丈夫ですか?」 と、柔らかく心地のいい声で囁いた。 ・・囁いてはいないのだろうが 物静かで、陽だまりのような声だった。 ゾクっと身震いが走る。 「・・・かっこいい・」
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