舞い降りて湧いた恋

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怖いもの見たさで美しい青年を凝視する風音と 物おじする事なく真っ直ぐに見つめ返す青年の視線が絡み合う。 ・・動けない。 青年の瞳に風音が映っている。 輝きが瞳の表面をキラリと流れた。 異次元の美しさに我を忘れて浸っていると 遠くの方からとくんとくんと音が近づいてくる。 とくん・・とくん・・ 「お詫びに、お茶でもどうですか?」 とくん・・とく 「え?」 遠くから近づいてきた音は 風音の中心でフォルテッシモを迎えた。 ドキン 吸い込まれる。 蛇に睨まれた蛙とはまさにこのような状況なのか。 捕食される・・・。 支離滅裂な風音とは裏腹に 王子様の優しい瞳はキラリと瞬き 甘美な世界へ(いざな)う。 「ケガをさせたお詫びにお茶でもどうですか?」 「ケガ・・?」 「膝から血が出てる・・」 この世で一番か弱い生き物になったような錯覚を覚えさせる程の 心配そうな表情が風音の瞳を覗き込む。 「そんな顔、されても・・」 うっかり、口から()いて出た。 ただ、戸惑っているだけなのに 経験不足が嫌味な言葉を引き出す。 すると、その言葉にハッとした青年は 「ケガさせて、すみません。病院に行きましょう!」 そう言うと、力強く風音の肩を抱いて歩き始めた。 『え?え?えーーーーー!?』 もはや声も出ない。 引きづられるように歩みを合わせていた風音だが 青年の暖かい懐や、ほのかな甘い匂いに気を取られて 思うように歩けない。 足が・・足が・・・もつれて・・っっ ぶわっ!! その時、風音の足が宙を舞った。 『何?何が起きたの??』 急に視界が広がり 同時にハンモックに収まったような 不安定な安定の中で世界が揺れてる。 恐る恐る見上げると 木漏れ日の光を受けてハレーションを起こした美しい顔が 顎から見える。 『ここここここれは・・  世に聞く、、お姫様抱っこぉぉぉっ!!!』 風音は自分の体重が気になって ジタバタもがいた。 何とか、王子様の腕から抜け出すと 腰が抜けてへたり込んでしまった。 そして、その姿勢のまま必死に手を振って 「いいです!いいです!」 と、繰り返した。 「・・じゃ、、、お茶でも?」
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