エピソードⅠ 殺し屋と豚汁

3/7
前へ
/22ページ
次へ
その女の大声と共に、廊下から、地鳴りのような足音が聞こえて来た。 ドッドッドッ!!! オレは、驚いて、そちらを見た。 居間に、次々と子どもたちが飛び込んできた。 「母ちゃん! メシ食いてー! 腹へったーー!!!」 そう、一番に叫んだのは、一番大きな中学一年生くらいの女の子だった。 ボーイッシュで活発そうな、ショートカットが、似合っている。 「ひとみ! いい加減その言葉遣い、何とかしな!」 女が言った。 女は、この子たちの母親のようだ。 「母ちゃん、何ですか! また、朝から豚汁ですか?!」 そう、文句を言うのは、小学校高学年くらいの男の子だ。 小利口そうに、メガネを掛けている。 「かずと! 豚汁は、健康にいいんだよ!」 母親が答える。 「いやよ! 朝から豚汁なんて、太るじゃない! あたし、ダイエット中なんだから!」 今度は、前の子より少し小さい、小学校の中学年くらいの女の子だ。 長い黒髪の、綺麗な子だ。 「ふつみ! 今からダイエットなんか、するんじゃないの!」 母親が怒った。 「母ちゃん! オイラ、豚汁、大好きだぜ!」 そう言いながら、飛び跳ねているのは、幼稚園くらいの男の子だ。 「みんとは、朝から食べ過ぎるんじゃないよ!」 母親が注意した。 最後に、部屋に入って来たのは、一番小さな女の子だった。 髪をツインテールにした、可愛い女の子だ。 「あたちは、豚さんのお汁、大ちゅき……」 そう、恥ずかしそうに言った。 「みみは、いい子だね~!」 母親が、やっと笑顔になって言った。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加