26人が本棚に入れています
本棚に追加
「なあ、みんな!」
母親は、豚汁を食べながら、オレと母親の話を聞いていた子供たちに向かって言った。
「この男、家で飼ってやろうと思うんだ。どうだい? ジローにそっくりな目をしてるよ」
それを聞いて、ひとみが言った。
「う~ん、確かに、この目つきの悪さ、ジローに似てるな」
すると、かずとが言った。
「ジローは、元が捨て犬だったから、初めは懐きませんでしたよね」
ふつみが言った。
「そうそう、寂しそうで哀愁があるところとか、そっくりね」
みんとが、走って来て、オレに飛びついて来た。
「お前、オイラの子分な!」
みみは、嬉しそうに、オレの頭を、なでなでして言った。
「今日から、あなたは、ジローでちゅ」
それを聞いて、母親が言った。
「ああ、本当の名前は、訊かないよ。ケガの具合からして、ヤクザもんかなんかだろう。この家じゃあ、ただのジローだ」
そして、気が付いたように付け加えた。
「あ、あたしの名前は、日向陽子っていうんだ。よろしくな」
そう言って、陽子は、飼い犬を撫でるように、オレの頭をワシワシと撫でた。
こうして、オレは、日向家の新しい飼い犬となった……。
最初のコメントを投稿しよう!