-11話

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オレンジ色のバラの入った花束を抱えながら、スマホで検索画面を開く。 ふわふわと後をついてくる優斗くんが、背後から画面を覗き込んでくる。    店を出る直前に森川さんは「オレンジのバラには他の花言葉もある」と言っていた。  花言葉を教わる前に、他のお客さんが入店して店内が賑わい始めた。  邪魔しては悪いと、私は「また来ますね」と言い残してお店を出た。 「どれどれ……えっと"愛嬌"や"無邪気"って意味もあるって」 『いやぁ、そんなに褒められると照れる』 「あとは"恋愛の達人"だってさ、これは当てはまらないね」 『なっちゃん、たまに毒舌になるよね』 例の駐車場に着くと、寄り添い合うように置かれている花束の群れに、持ってきた花束をそっと手向けた。 『全部天国まで持って行けたらいいのに』 優斗くんがその場に屈み込んで、置かれている花束に手を伸ばすが、やっぱりその指先が鮮やかな花に触れることは叶わなかった。 『しっかり目に焼き付けておかなきゃ』 花や贈り物をひとつひとつ覗き込む彼の横顔を、私はぼんやりと眺めた。 希の願いが通じたことがきっかけになり、様々な人の想いがめぐりめぐって、今こうして遠い存在だったはずの彼が幽霊になって目の前にいる。 この場所に花を手向けた人達の想いも辿って行くと、きっと優斗くんの元に届いているのだと、そう信じてみたくなる。 『あ、修司が持ってきてくれたのって、きっとこれだよね』 しゃがみ込んでいた優斗くんが、すくっと立ち上がって足元の花束を指差す。 群れからそっと離れた位置に、その小さな花束は慎ましく置かれていた。 『こんな可愛い花持って、ここまで来てたの想像すると不謹慎だけどちょっと笑っちゃう』 口元に手を当てて、ふふっと笑う優斗くんを見て、私も同じように笑った。
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