雨の日

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それでも彼は、離れて行ったのだ。これからは嘘は付かずに生きたいと思う。 嘘をついてる時間などないのだから。 そういえば、自分に、とっても正直な彼もいた。 初めて部屋を訪れた時、彼の部屋には、あちこちに、砂時計が置かれていた。 机の上に、棚の隅に……とにかく色々な場所に、かなりの数の砂時計があった。 私は訊いた。 「何故こんなにたくさんの砂時計があるの?」 彼は、こう答えた。 「簡単だよ、生きることは、有限だと常に自分が忘れないようにさ」 そうだよね、人生は無限では、ないんだね。 どこかふわふわ生きてる、私みたいな者にも、終わりはやって来るんだった。 感心しながら、私は彼の本棚の本たちを見て、段々と怖くなっていた。
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