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治癒
王子は毎日少しずつ良くなっているようだった。
数日して意識ももどり、段々ベットから起きることができるようになった。
始めは、反対していた7人も身体を拭くのを手伝ってくれたり料理も手伝ってくれた。
ただ気になることがあった。体調が良くなった王子は、この前私に酷いことを言ったことを覚えてないのか忘れたふりなのか、そのことに一切ふれない。
話ができるようになりお礼を言われた時は、
『始めまして。貴方が僕を助けてくれたのですね…。』熱い眼差しで腕を握られ、騎士がくるまで離してくれなかった。
その後も部屋で2人きりの時は、必ず私の手を握って
いた。始めは心細いのかと思っていたが、段々顔が近くなっていて、最近はこちらが恥ずかしくなっていた。
一緒に過ごすうちに、王子は優しい感じがした。話し方や雰囲気、この前とは全く違うそんな感じ…。でも顔は、あの王子なのだ。
ーー記憶喪失とかそんな感じなんだろうか?
素人の私はいろいろ心配していたが、医者の青の男はもう体調回復していると診断していた。
王子が帰る日になった。
黄色の男が帰るための馬を準備してくれた。
「ありがとうございます。みなさん命の恩人です。お礼に今度城のパーティーにご招待します。あと何かお礼できることはありませんか?」
私は王子にみんなの思いが届くようにゆっくり話しだした。
「王子様、それでは金のオリーブをもうとりにくるのはやめていただけませんか?今回は金のオリーブをとりに行って怪我をしたのでしょう?金のオリーブは、この7人が守っている大切なものです。大切なものを奪わないで下さい」
王子は私の話しを黙って聞いていた。7人も真剣な目で王子を見ていた。
「本当に申し訳なかった。陛下の命令で取りにいったんだ。金のオリーブがあれば、平和に国が整っていくといういい伝えが我が国にはある。
最近小さい戦などが多発していて少しでも国を平和にする為に、いい伝えに頼ってしまった。
金のオリーブに頼らなくても、もっと国がうまくいくように、俺達がやれることをやっていくよ。
俺の名はハリス•ルーカス、アステリアス大国の王子だ。この恩は忘れない。雪ありがとう。みんなありがとう」
王子は馬に乗る前に私と握手をしたかと思うと、そのまま腕を引っ張る。そして強く抱きしめられた。
突然の王子の振る舞いに私は顔を真っ赤にした。周りにいる騎士の目は鋭くなり2人に刺さった。
王子も視線を感じたはずなのに、そんなこと気にせずさらに王子は雪のほっぺに軽くキスをした。
私がカチンカチンになった顔をみた王子はキラキラの笑顔をふりまき、城に帰っていった。
私も7人の騎士も王子の後ろ姿を見送った。
騎士はみんな雪に聞こえないように呟いていた。
「やっぱり王子ってなんだかイラつく」
「みんな我慢して、手だしてないのに……」
「もうアイツ絶対雪に合わせない」
「俺アイツ暗殺しそう……」
「あいつ他に雪になんかしてないだろぅな」
「……」
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