第2章 傷ついたきみを甘やかしたい

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 本来、進みたかった道の入り口で大きな挫折を経験して、ずいぶん長いあいだ、気落ちした状態が続いていた。  自分の不幸を呪うことしかせず、性根が腐りかけていた俺を救ってくれたのが、清々しい彼女の存在だった。  それまで付き合ってきた女の子を数え上げれば、平均以上だったと思う。  でも、その存在が尊いとまで思った相手は、彼女が初めてだ。 「では、高梨専務、乾杯の音頭をお願いいたします」  マイクを通しても、奈月の声は清らかな水みたいに澄んでいた。  高校時代、放送部所属で、全国大会で優勝したこともあるらしい。  俺より1年前に入社したけど、1歳年下。  ……というのは、後で必死にかき集めた情報。  研修期間が終わり、営業部配属になって、総務の彼女とはそれからしばらく顔を合わせることはなかった。
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