プロローグ 過ちの夜

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 彼は、わたしが勤める繊維メーカーの1年後輩。  でも歳はひとつ上。  女子社員に絶大な人気を誇る第一営業部のエース、島内(しまうち)亮介28歳。  幼稚園からストレートで大学まで行ける名門校の出身。  大学を2年留年したのも、遊びすぎたせいらしい。  社内ゴシップにはあまり関心のないわたしでさえ、彼の噂はよく耳にする。  それほど、注目の的だった。 「もっと乱れてごらん……今だけ、嫌なこと全部忘れちゃえよ」  甘く淫靡な声が、滴る蜜のように、耳から入り込んでくる。  彼は体を起こすと、わたしの敏感な部分に指をあてがった。 「あ、あ、それ……いやっ……島内さん、やめて……」  彼は口角を少し上げ、目を細めて、わたしを見下ろす。  あまりにも艶めいたその表情に、鼓動はますます高まっていく。
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