第2章 傷ついたきみを甘やかしたい

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 そっけない手紙。  やっぱりあの人にとって、彼女でもない女性と一夜を共にするなんて、たいしたことではないんだ。  でも恨み言を言うつもりはなかった。  昨夜、この部屋に来たのは、完全にわたしの意思。  無理やり連れこまれたわけじゃない。  お腹は空いていなかったけれど、喉はひどく乾いていた。  冷蔵庫からグレープフルーツジュースを出して飲む。  ひりひりと喉に沁みたけれど、とても美味しかった。  生き返った心地がした。  大きく伸びをする。  身体はなんだかだるかったけれど、頭はすっきりしている。  軽い頭痛はあったけれど、真綿が詰まったような嫌な感じは取れていた。  よく眠れたからか、なんだか気分が良い。  シャワーを浴び、支度を整えて、部屋を後にする。  外に出ると、明るい陽光の下で東京タワーが白々と立っている。    昨夜はあんなに妖しげに光っていたのに。  あの光にも惑わされたような気がしていたのに。  今は、ただの鉄塔にしか見えなかった。
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