第2章 傷ついたきみを甘やかしたい

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 俺はビール瓶を掴み、ごくごくと呷って、それから大きなため息をついた。 「しかもさあ、彼女、今日休んでたんだよ、会社を」 「真面目な子なんだろう。ショック受けちゃったんじゃないか」  俺はまた、盛大にため息をつく。 「彼女の気持ちがちゃんと俺に向くまで、ゆっくり時間をかけるつもりだったのに……でも、ずっと好きだった相手にあんな切ない表情されたらさ……とてもじゃないけど自分を抑えられなかったんだよ」 「まあ、そうやって勝手にひとりで落ち込んでろ。俺、忙しいんだよ」  そう言うと、栗原は仕込みに戻った。  あれは……4年前の入社式の日。  受付で書類を渡してくれたのが、彼女、植田奈月だった。
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