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「いえ、それは大丈夫です」
「では木曜日にはできてますから。午前でも大丈夫ですよ」
ああ、もっと聞いていたいんだけど、この声。
「あの、お名前……伺っといていいですか?」
「あ、失礼しました。総務部第1課の植田です」
「じゃあ、植田さんを尋ねて行きます」
「わたしが不在でもわかるようにしておくから大丈夫ですよ」
いや、不在のときになんて絶対行かない。
このチャンス、逃すわけにはいかない。
木曜日になり、外から彼女がいるのを確かめて、鍵を受け取りに行った。
さらにその日の帰り道、彼女の姿を見かけた俺は、声をかけ、駅まで一緒に帰り、顔と名前を憶えてもらうことに成功した。
一対一で会話を交わしても、第一印象が覆ることはまったくなく、彼女に対する想いは強まる一方。
とにかく、もっと近づきたい。
そのころは、その想いに突き動かされていた。
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