第2章 傷ついたきみを甘やかしたい

20/23
前へ
/152ページ
次へ
「いえ、それは大丈夫です」 「では木曜日にはできてますから。午前でも大丈夫ですよ」    ああ、もっと聞いていたいんだけど、この声。 「あの、お名前……伺っといていいですか?」 「あ、失礼しました。総務部第1課の植田です」 「じゃあ、植田さんを尋ねて行きます」 「わたしが不在でもわかるようにしておくから大丈夫ですよ」  いや、不在のときになんて絶対行かない。  このチャンス、逃すわけにはいかない。  木曜日になり、外から彼女がいるのを確かめて、鍵を受け取りに行った。  さらにその日の帰り道、彼女の姿を見かけた俺は、声をかけ、駅まで一緒に帰り、顔と名前を憶えてもらうことに成功した。  一対一で会話を交わしても、第一印象が覆ることはまったくなく、彼女に対する想いは強まる一方。  とにかく、もっと近づきたい。  そのころは、その想いに突き動かされていた。
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6365人が本棚に入れています
本棚に追加