第2章 傷ついたきみを甘やかしたい

22/23
前へ
/152ページ
次へ
 ずっと不眠が続いているという彼女を寝かせてやりたかった。  一方的に男に捨てられて寂しい思いをしてる彼女を、とにかく抱きしめて甘やかしたかった。  そのためだったら軽蔑されてもいい。  そのときは本気でそう思った。  自分の内のどこを探しても、この機会に乗じて、手籠めにしようなんて気はさらさらなかった。      事の後、奈月は疲れ果てて、気絶するように眠りに落ちた。  一方、俺は眠るのが惜しくて彼女の寝顔をずっと眺めて過ごした。  彼女がすぐそばにいる幸せを噛みしめながら。  奈月……  俺なら、きみをこの世の誰よりも大切にするのに。  絶対、泣かせたりしないのに。    顔にかかった髪をよけてやろうと、そっとその頬に触れたとき。  彼女は少し身じろぎして、それから寝言をつぶやいた。  無意識に手を伸ばしながら「ん、ゆうき……」と。
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6366人が本棚に入れています
本棚に追加