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ずっと不眠が続いているという彼女を寝かせてやりたかった。
一方的に男に捨てられて寂しい思いをしてる彼女を、とにかく抱きしめて甘やかしたかった。
そのためだったら軽蔑されてもいい。
そのときは本気でそう思った。
自分の内のどこを探しても、この機会に乗じて、手籠めにしようなんて気はさらさらなかった。
事の後、奈月は疲れ果てて、気絶するように眠りに落ちた。
一方、俺は眠るのが惜しくて彼女の寝顔をずっと眺めて過ごした。
彼女がすぐそばにいる幸せを噛みしめながら。
奈月……
俺なら、きみをこの世の誰よりも大切にするのに。
絶対、泣かせたりしないのに。
顔にかかった髪をよけてやろうと、そっとその頬に触れたとき。
彼女は少し身じろぎして、それから寝言をつぶやいた。
無意識に手を伸ばしながら「ん、ゆうき……」と。
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