第2章 傷ついたきみを甘やかしたい

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 元カレの名前か。  そんな奴の夢を見てるのか。  自分勝手な理由で彼女を捨てた男の……  激しい嫉妬が俺を襲った。 (はらわた)が煮えくり返る。  と、同時に凶暴なほどの欲望がふつふつと湧き上がってきた。   彼女から、その男の痕跡をひとつ残らず消し去りたかった。  だが手を伸ばしかけて、思いとどまった。  こんな剥き出しの欲望をぶつけたら、彼女をさらに傷つけてしまう、と。  そっとベッドを抜け出し、隣の部屋のソファーに横になり、眠れない夜を過ごし、早朝、奈月が目を覚ます前にホテルを後にした。  まだ人けのない街をタクシーの窓から眺めながら、俺は思っていた。  やっぱり彼女じゃなきゃだめだ。  いつか心が通いあう日まで、彼女を絶対に諦めない、と。  でも、どうすれば……  まずは栗原の言う通り、気持ちを伝えることから始めないと。  今日、総務を訪ねたとき、ある仕掛けはしておいたけど、明日になって彼女が連絡してくれるかどうか……  今夜も眠れない夜になりそうだ。
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